家族信託

12.家族信託について

84年ぶりに改正された新信託法が、平成19年9月30日に施行されました。
新信託法は、現代の社会情勢の多種多様なニーズに対応するため、いくつかの新たな制度が
設けられました。

今後の検討課題も多いですが、当事務所では、将来発生するであろう相続への対応、高齢者
や障害者の生活支援のための信託である家族信託を中心に取り組んでいきたいと考えます。

まずは、ご相談から、民法・信託法などの法律、及び登記手続の両方の専門家である司法書
士にお気軽にお申し付けください。

本ページの内容(項目をクリックすると表示されます)
 12-1.信託とは
 12-2.家族信託の活用例

 

12-1.信託とは

信託とは、信託希望者(委託者)が、一定の方法(信託行為)によって、信頼できる人(受
託者)に対して不動産などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した一定の目的(信託目
的)に従って、受益者のために、その財産(信託財産)の管理・処分などを行う財産管理制
度です。

土地・建物の不動産を信託した場合、不動産の名義人は受託者となりますが、信託の登記を
あわせて申請することにより、信託財産であることが公示されます。
預貯金については、不動産と異なり、信託財産であるとの公示ルールがないため、あらかじ
め金融機関に「受託者」+「信託口」名義の口座を開設可能なのかを確認する必要がありま
す。

信託の当事者
①委託者
②受託者
③受益者
④信託管理人、信託監督人、受益者代理人(必須ではない)

信託行為
①信託契約
②遺言信託
③自己信託

信託目的
委託者が信託によって達成しようとする目的で、受託者の行動指針となるもので、受託者は
、信託目的に反する管理・処分はできません。

信託財産
受託者に移転ができる委託者の特定の財産で、金銭的価値に見積もることができる財産
信託財産は、受託者が破産しても破産財団にはなりません
受託者に相続が発生しても、信託財産は相続財産とはなりません

 

12-2.家族信託の活用例

1.任意後見支援型信託
【活用例】
高齢の委託者が、老後のために貯蓄した金融資産や収益性のある不動産を適切に管理して、
自分と妻の老後の生活を守りたい場合
【スキーム】
委託者=夫
受託者=子供など親族
受益者=夫、妻
【メリット】
①自己の適性な判断能力の喪失や加齢等により自分のことが自分でできない事態に備えて信
託を設定し、自分や家族の生活の安定を計ることが可能
②成年後見制度に比べ、財産管理方法について自由度があり、委託者と受託者の間で財産管
理の方法について柔軟に設計できる。

2.不動産管理信託
【活用例】
①自己所有の不動産が遠方にあり、委託者自ら管理することが困難な場合
②リフォーム詐欺被害に遭わないよう自己の居住用不動産を安全に管理したい場合
【スキーム】
受託者=子供など(信頼のできる方)
受益者=委託者
【メリット】
①不動産の名義自体は、受託者に移転されているため、判断能力の低下した高齢者を、軽率
な処分による損害、悪徳業者からの搾取等からガードできる
②受託者の破産等によるリスクを回避できる

3.後継ぎ遺贈型受益者連続信託
【活用例】
家督相続の志向が強く、自分亡き後は、所有資産を長男に譲り、その後も長男の家系で代々
この資産を継いで欲しい場合
【スキーム】
受託者=受け皿となる法人の設立
受益者=委託者
第二次受益者=長男
第三次受益者=長男の息子
【メリット】
①遺言ではできない連続した資産承継の仕組みが可能

4.成年後見と福祉型信託(親亡き後の子の生活保全)
【活用例】
知的障害の子がいる高齢者が、自身の財産管理能力、または自身の死後の事について財産管
理能力に不安がある場合
【スキーム】
受託者=子供・存続など(信頼のできる方)
受益者=知的障害の子
指図権者=成年後見人等
【メリット】
①委託者の生前に、信託財産の所有権が受託者に移転されるため、第三者からの財産侵害が
回避できる
②受益者は、信託財産の所有権は取得しないので、第三者からの財産侵害を受けない
③委託者が死亡後すぐに、受益者は不動産収益などの給付を受けることができる

5.共有不動産の信託活用による管理一元化
【活用例】
兄弟間で共有している不動産(賃貸ビルなど)で、将来、兄弟の子供の代が相続する頃にな
ると権利関係が複雑になるので、親族間の紛争を未然に防止して、資産価値の維持向上を図
りたい場合
【スキーム】
受託者=受け皿となる法人の設立
受益者=従前の不動産共有者
【メリット】
①不動産を一元化して権利関係の簡明化
②不動産の維持管理方針の明確化により、資産承継者間の紛争を防止し、一族の財産として
将来に渡って承継していくスキームの確立

6.株式信託による事業承継
【活用例】
株式のすべてを創業者の自分が所有しているが、高齢になったこともあり、後継者である長
男に株式を譲渡したいと考えている。しかし、贈与税等の負担回避したい場合や長男が後継
者としてふさわしいのか、生きているうちに見極めたい場合
【スキーム】
受託者=長男
受益者=委託者
【メリット】
①指図権の定めを盛り込めば、委託者が長男の議決権行使に影響を持つことができる
②委託者が死亡したときには、信託が終了し、株式は長男に移転するよう定めておくことが
できる(遺言代用信託)
③長男が後継者にふさわしくない場合、委託者の一方的意思表示で、信託契約の解除ができ
るようにしておくことが可能

【家族信託の費用】

【作成費用】 消費税込み
報酬 信託契約書作成援助 \110,000~
登記手続き       \55、000~
登録免許税 不動産の価額 × 0.4%
実費等 公正証書の作成費用、登記事項証明書等必要書類の取寄費用